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ワンピース二次。
赤髪さんとおねえさん。
・・・マイナーだなぁ。
赤髪さんとおねえさん。
・・・マイナーだなぁ。
港町といえど、島の外れの小さな村の小さな港。
1年ほど前から大所帯な海賊団が拠点にしているとはいえ、それでも村の夜は早かった。
それは、すっかりその海賊団の船員達の台所と化している彼女の店も変わりはなく。
片付けを終えた店はその灯りを落とし、けれど店主の彼女は、まだカウンターの中に居た。
・・・目の前には、本日最後のお客様。
骨ばった掌に揺れるグラス中で、溶けかけの氷がからん、からん、と。
その客は、昼間の顔はどうしたものか、先ほどから一言も口を開かず、何を見ているわけでもなく、ただ、手にしたグラスの氷を揺らして彼女の目の前。
けれど彼女も若いとはいえ一応酒場の店主。客が話す気がないのなら無理に話そうともせずに、静かに黙ってカウンターの中。鳴り続ける氷に合わせて、ゆらり、くらりとリズムをとって。
客の男が、視線だけで彼女にも一杯を勧めた。彼女は少し困ったように首を傾げたが、やがて根負けしたように自分にもグラスを1つ、手に持った瞬間に男が酒を惜しみなく注ぐ。
言葉もなく合わさるグラス。ちん、からり。
さすが酒場の店主だけあって、彼女が見た目によらずいける口なのを男は知っている。事実、男が氷で割っているその酒を、彼女はストレートで一息に飲み干した。ほうっと漏れる一息と、感嘆の溜め息。
再び満たされるグラス。2杯目は彼女はゆっくりと、舐めるように喉に通す。
灯りの落ちた店内。暗闇が染み渡る中、男と彼女の間に立つろうそくだけがかろうじて2人の顔だけを映していた。
けれど、ろうそくには寿命がある。
彼女が3杯目のグラスを、男がもう何杯目かも分からないグラスを空ける頃には、それは今にもテーブルにキスしそうなほどに近付いていて、2人は今にも影に沈みそうだった。
けれど男には彼女の光る眼が見えていたし、彼女にも男の柔らかい眼が見えていた。
特に何事もなく、ただ2人の視線はお互いを見る。にらめっこだと、男の眼が少し細くなった。
彼女は見る、陽に焼けだらしなく伸び切った赤い髪、左瞼を覆う深い古傷、他は清潔そうに見えるのに、何故かそこだけ手を抜いてるようにしか見えない無精ひげ。
男は見る、港町の潮風にさらされているはずなのにやけに艶めいている黒髪、きっちり分けられた前髪から覗く白い富士額、夜になると輝きが増してみえる猫のような眼、いつも笑顔を絶やさない唇。
お互い上から下までじっくり見詰め合って、そうして2人同時に吹き出した。引き分けだと、肩をすくめて見せる男に微笑う彼女。
「・・・明日、発たれるんですね」
ごくごく自然に、彼女は言葉を発した。静かな空間に、それは滑らかに溶け込んで。
「・・・ああ」
男の声も、この空気の流れを掴んで乗せて。
「迷惑をかけた。コトを起こす気はなかったんだが」
「いえ」彼女は微笑って首を振る。「おかげで、わたしにとっても大切な友達が、救われました」
今日の昼間、この静かで平和な村で、事件が起こり、そして死人が出た。それはこの村の人間ではなく、男の仲間でもなかったが、しかしこの村の平穏が暫し絶たれたのは事実。男はそれを潮時とした。
「とても世話になった。ありがとう」
カウンターのテーブルに、男は片手をついて頭を下げた。「・・・それと、すまない」
彼女は微笑った。そうして男の頬に手をあて、顔を上げさせる。
「・・・やっぱりあなたは、海賊でしたね」
彼女の手に挟まれたまま、男は苦笑することしかできない。
「でも、海賊さんが奪ったことを謝るなんて、おかしいわ」
微笑う彼女のその言葉に、男はついに破顔した。
残った腕でグラスを掲げる。彼女はそれに溢れんばかりに酒を注ぎ、そして男もそれに倣った。再び合わさるグラス。氷などもうすっかり溶け切っていて、ただグラスの音だけが静かな店内に響き渡った。
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OPで何かって思ったときから何故かこの2人の組み合わせが頭に・・・マイナーにも程があります。
あーでも、実はカップリングではないつもり・・・
「彼は大切なものを盗んでいきました。それは・・・あなたの心です」なんてベタな感じでもアリなように書いてはいますが。
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