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SFC版DQⅢ二次。
勇者のその後。
パーティは勇者含めみんな女wだぁって光のドレス装備出きるんだもん♪♪
勇者のその後。
パーティは勇者含めみんな女wだぁって光のドレス装備出きるんだもん♪♪
その夜明けは、壮大なようで、けれど故郷の夜明けと然程変わりはなかったように思う。
ただ、この地の人々にとってそれは、やはり壮大で、偉大で、美しく、心震えるものだったのだろう。
みな慣れていなかった眩しさに瞳を焼かれ涙を流し、そしてすぐに歓喜の涙へと変わり、やがて全国土を揺るがす宴へと変わっていった。
宴の前、夜の国の王だった人は、涙を流して頭を垂れた。
王都の呪術師見習いの少年は、初めて浴びた陽の光に興奮しすぎて、鼻血を流してぶっ倒れた。
家出少年よろしくふらふらしていた吟遊詩人は、もうかき鳴らしても危険のない竪琴を手に踊り狂っていた。
過去2度剣を合わせた盗賊も、この喜ばしい日に全てを赦され、今までの彼にとっては寧ろ邪魔でしかなかったはずの光の下で、清々と笑っていた。
みんな、笑っていた。わたしと共に居た3人の仲間達でさえも。
わたしは、一人、浮いていた。
*
舌の上で呪文を転がす。
王都の裏の水路。一匹の猫が、溝に投げ出したわたしの太腿に擦り寄ってじゃれてくる。
その頭を撫でながら、ゆっくり、ゆっくり、今まで散々使い慣れてきたはずの呪文の言葉を紡いでいく。
「・・・・・・・・・、・・・」
最後の言葉を乗せた瞬間、わたしの周りから光が消える。・・・・・・これで、何度目だろうか。全く発動しないわけじゃない。その証拠に、完全に回復していたはずのMPは、もう残り僅か。祈りの指輪は賢者に持たせていたから、これ以上試すつもりなら彼女達に会わなければならない。それは酷く、・・・なんというか憂鬱で、結局わたしはやけになって草原に背を預けた。
先ほどまで腿に乗っていた猫が、腹を越えて胸までやってくる。更に小さな舌を伸ばして、頬をぺろり、ぺろり。
わたしたちが戻って、国中で宴が始まってから、もう大分経つ。陽は既に落ちかけ。けれど城の向こうからの喧騒は、やむどころか益々賑やかになっていくばかり。
そりゃあ、嬉しいだろう。わたしがもし彼らの立場だったなら、嬉しいと思う。夜が明け、陽が昇り、そうしてまた沈み、その繰り返し。わたしにとっては当たり前のその景色、けれどずっと夜に閉じ込められたままだったなら、その流れのなんと尊きことか、美しきことか、その喜びは尽きることなく、飽くことなく続くのだろう。
わたしだって、嬉しくないわけじゃない。どこか沈みがちだった人達が、今ではとても明るく笑っている。その笑顔は何よりのご褒美。・・・・・・つまならい、名前なんかよりずっと。
そうして蘇る、あのいやないやな言葉。
『この地にて子を成しなさい。あなたの血を決して絶やさぬよう』
仮にもレディーに対して、あんまりな言い草だ。わたしが子供を産むときは、産みたいから産むんであって、決して血のためじゃない、血のためであっていいわけがない。
愛し、愛されて、だから子供を産んで、その子を愛して・・・・・・
そもそも、わたし自身の血が、どれほどのものだというのだろう。
確かにお父さんも勇者と呼ばれていた。でもおじいちゃんは普通のおじいちゃんで(寧ろもう半分ボケてるし)、特別な武勇伝があったとも聞かないしあるとも思えない。お母さんだって、小さい頃に死んじゃったおばあちゃんだって、今振り返ればごくごく普通の人だった。(ああでも、おばあちゃんはちょっと魔法が使えたんだったっけ)
でも、お父さんが強かったのは、努力したからだ。わたしがアレを倒せたのは、みんなが居たからだ。
血なんて関係ない、なのに――
《・・・・・・戻りたいのですか》
ふと聞こえた声にはっと身を起こせば、目の前の水路の上、ぼうやりとした光の中に、見覚えのあるかの姿。
「ルビス・・・・・・、さま」
《お久し振りです、勇者さま。そしてほんとうに、ありがとうございました》
虹色のドレスの裾をつまんで、この地を創った神でもある精霊ルビスは、優雅にわたしに頭を下げた。
――ルビス。そうだルビス!彼女の封印を解いたとき、たしか彼女は「何かあったら必ずお役に立つ」とかなんとか言ってたじゃないか!彼女はこの地を創った神。神ならあの大穴をまた拡げることくらい・・・・・・
《・・・残念ながら勇者さま、わたくしにはそこまでの力はないんです》
わたしの心を読んだのか、それともわたしの顔に書いてあったのか、言葉を発する前にルビスはやんわりとわたしの願いを退けた。
「なぜ?あなたはこの地を創った神なのでしょう?あの穴だってこの世界の一部。あなたの手によるものではないの?」
感情を抑えてるつもりで、けれどわたしは相当必死な顔をしているのだろう、反比例するようにルビスは静かな静かな顔で、ゆっくりと首を横に振る。
《違うのです、勇者さま。わたしは確かにこの地を創った、けれど“神”ではないのです。神はもっと空の上、あなたの産まれた地より空の上、あなたは聞いているはずです、竜の女王さまの城で》
・・・・・・聞いている。確かに、あの寂しげに広い城、門番のユニコーンは「天界に一番近い場所」といい、その奥の奥のステンドグラス、そこから差す光の中を舞い踊るエルフが、この光の中から天界の“神”の元へ導かれるものが居ると、そう微笑っていた。
わたしが黙った沈黙の上、静か過ぎて正直勘に触るルビスの声が降り続ける。
《わたしは天界の竜の神よりこの世界を任されたもの。わたしが創りしはあくまでこの世界の“大地”。この世界そのものをお創りになったのは、天界に在る竜の神さま、神龍――マスタードラゴン》
神とはなんだ。マスタードラゴンとはなんだ。わたし自身余り好ましくないとは言え、それでもわたしは勇者と呼ばれる者。ロトの称号を受けた者。わたし1人の力ではないけれど、バラモスを倒し、ゾーマも倒した。その見返りが知らぬ世に閉じ込められ、子を成すことが最後の務めとばかりに言われ・・・・・・
《――あなたへの無礼な言葉は、わたくしから詫びましょう》
柔らかな光がすいと近寄ってきて、ルビスの手がわたしの唇に触れた。噛み締め過ぎて傷付いたそこに。
《申し訳ありませんでしたわ、勇者さま。その辺りのことは今後決して強要しないと、我が名に於いて誓いましょう。・・・・・・それでも、》
一呼吸置いたルビスの眼は、静かどころかひんやりとしていて、僅かにぞくりと背中が鳴る。
いや待て、おかしいじゃないか。何でこんな、わたしが脅されるような真似をされなきゃいけないんだ。
「――産まれ育った世に還りたいと望むことは、そんなにいけないことですか」
旅の扉を封じ、他国と余り交流のなかった小さな島国、けれどその分国の人間同士はみな仲良くて、緑も多く海もめいっぱい広がる、美しい小さな島国。
お母さん。おじいちゃん。アリアハンのみんな。お父さんはもう戻れないのに、わたしまで戻らなかったら、お母さんがどんなに哀しむか。
そして、お父さんの・・・アリアハンの勇者オルテガの、最期の勇姿を伝える、それこそがわたしの義務だと思う。勇者ロトとしてでなく――1人の、勇敢に闘った男を看取った者として・・・そして、その男の、娘として。
《・・・・・・・・・・・・そう、ですか》
ルビスはすいっと離れ、その身体は空へ空へと舞い上がっていく。背後にかかる不自然に鮮やか過ぎる虹。かの魔城への橋渡しのときと同じといえば同じものであるはずなのに、何故だかとても不気味なものを覚えた。
《なればもう、お留めすることはできません。約束でしたものね、きっとあなたのお役に立つと》
そうして彼女はすっと、指先をある方角へ示した。
《わたくしが封じられていたあの塔、あれはあなたの世界でいう竜の女王さまのお城と同じ。あの塔の最上階の光の中、まことの勇者の称号を得たものは、きっとマスタードラゴンのお傍へと導かれるでしょう》
彼女はそれだけ言うと、ゆうるり微笑ってわたしを見下ろす。静かに静かに、いっそ恐ろしいほど穏やかに。
彼女の背後の虹が渦を巻く。ぐるりぐるり、彼女を取り囲んで踊る。
《・・・されど、勇者ロトよ》
気付けばいつの間にか彼女は再びわたしの目の前、その腕を、真っ直ぐ――――わたしの、子宮の、中に。
「・・・・・・・・・っ!!」
突き抜け、何かを握り、毟り取られた痛み。思わず蹲って触れられた下腹を押さえる、けれどそこに外傷はなく、ただずくずくずくずくと、内側から。
「な、にを・・・・・・ルビス!」
顔を上げればルビスはもう手の届かない空の上、その身体に妖しげに虹を纏わせ、わたしの頭上をくるくるり。
《勇者ロトよ、あなたも聞いたはず、あの最期の魔王の言葉を。・・・・・・あなたの血を、失うわけにはいかないのです》
くるくる回る彼女の右手、柔らかく握られたその中身、わたしの子宮から抜き出した、その中身。
《――時を見て、せめて良い夫婦の元へと届けましょう》
微笑む顔は先ほどと委細変わらず、それが尚一層恐ろしく、尚一層憎らしく。
「サイテイだわ・・・あんた」
吐き棄てた唾は透明だったけれど、確かに混じる血を見て、わたしも彼女も、いっそ嗤うしかなかった。
*
「・・・で、どうする?」
もうすっかり夜も更けた丑三つ時、魔城の割れ目と通じた洞窟の入り口の前で、わたしは3人の仲間に進退を問うた。
余計なことは一切言わない、あの愛らしいばかりの精霊に犯された事実も伏せて、ただかの塔の最上階の話だけを伝えた。
集まったときは3人ともいい具合に酔い潰れていたのに、今じゃ3人が3人とも真摯な面持ちで俯いている。
1番年長の盗賊の彼女が、手にしたスキットルをぐいと呷った。
「――あたしは、ここに残るわ」
片目を覆うほどに伸びたラベンダーのショートヘアの前髪をちらりとかきあげて、酒臭い息と共に彼女は言い切った。
「あんたは知らなかったかもしれないけどさ、ルイーダんとこに世話になってる連中は、みんな行き場所がないのよ」
その言葉に、双子の賢者姉妹が更に俯く。
「あたしはあたしの村をバラモスにやられた。ちょっと出稼ぎに出てた間にね」
・・・それは、長く旅して初めて聞くこと。思えば、彼女達とルイーダの酒場で知り合って今まで、彼女達の家族や故郷の話をちらりとも聞いたことがなかったことに、今更ながら気付く。
それでも彼女達は、宿賃の節約だと何だかんだでアリアハンの自宅に戻るときも、いつもと変わらぬ様子で着いてきてくれていた。
無神経、だったのかもしれない。いや、無神経だったのだろう。
けれど年上の彼女は、ぱちんとウィンクをしてわたしの頭をわしゃわしゃと撫でた。懐かしくて、哀しくて、嬉しかったんだよ――そう、小声で呟きながら。
やがて、元は僧侶だった賢者姉妹の姉の方も口を開く。
「わたしも、残る。あの子・・・あの、呪術師見習いのあの子に、先生になるって約束、したから」
「ねえさんが残るなら、わたしも」
魔法使いだった賢者妹も、それに続く。
「それにさ、みんな聞いたでしょ、アイツの最期の言葉」
“光在る限り闇もまた在る。わたしには見える、再び何者かが闇の底から現れよう――”
「あたしらは、“勇者ロト”じゃあないけど、さ」
再び主導権は盗賊の彼女に戻って。
「忘れないこと、忘れさせないこと、何かが起こっても大丈夫なように受け継いでいくこと、それっくらいなら、できるでしょ?」
そうしてきっと、再びコトが起こったときには、またきっと。今のように集って、みんなで力を合わせて。
彼女は笑い、姉妹も笑った。わたしも、笑った。
「・・・わたし、思うの」
ゆっくりと、円の中に手を差し出す。すぐさま盗賊ねえさんが手を重ねてくれて、次いで双子姉妹の姉と妹も、間髪入れずに。
「わたしたちみんな揃って、“勇者ロト”だって」
1番上に、ロトのしるしを重ねる。
これが、今生の別れ。それすなわち、“勇者ロト”の、死。
何故なら、4人揃ってこその、“勇者ロト”だったのだから。
そうして、それぞれにロトの武具と呼ばれたものを分けた。
ねえさんには剣を、双子姉には鎧、妹には盾。そしてわたしは、しるしを持って。
それぞれに、円陣を組んだまま、背を向けた。わたしと姉妹は呪文の詠唱、ねえさんは、それを楽しそうに聞きながら、キメラの翼を手に持って。
こうして、“勇者ロト”は消えた。
花火のように華やかに艶やかに、一斉に飛び出した夜を走る流星と共に。
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・・・・・・無駄に長ぇ;;
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