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* それはとても、晴れた日で *

かきたいときに、そのときかきたいことを無節操に。

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【DQⅣ二次(PS版)】篭の鳥【クリアリ】
PS版DQⅣ二次。
王女と神官。
クリアリvvクリアリvv









 ひめさま。
 ぼうやりと佇む少女の背なに届く言葉はどれなのかと。分からぬ男はただ、ひめさま、とだけ呟いた。
 天は七色、祈る女神は白亜、紅い敷布、黄金の楽器。
 あの空はこんなにも複雑怪奇だったのだろうか、あの空に住まう人々はこんなにも。栄華にも絢爛にも、いっそ一番遠くはなかったか。
 今ではそれもとおくとおく、分からぬ男は変わらず由縁すら今や知れぬ書物を抱いて、ゆうるりとほほえみ日々を。
 男は愛されて望まれて、そうして人々に神の教えを。ヒトが創りし偶像崇拝、由縁すら今や知れぬ書物を抱いて。
 ほんもののそれは、何も言わず何も教えず、ただ雲のように人の上を流れ見つめ、飽きたならば空に続き人に繋がる糸を繰り絡めるだけだと、それをたとえ知ったとしても。

 流れた時は、けしてそれほどとおからず、けれどこの箱庭で二人、思えばそれはとおくとおく。
 巡る世界、少女と男は近くに背を合わせ、肩を並べ、手を伸べ伸べられて取り取られ、少女は男をなんびとにも触れさせまいと、男は少女をなんびとにも侵させまいと。
 それは少女の正義感、それは男の使命感。そして少女には淡かった、男には熱かった。

 取り戻された世界。それは民にも開かれぬ絢爛なる監獄。少女は変わらず面に立ち、男は変わらず陰に立ち、しかしそれは今までのような表裏一体ではなく、間に立つのは扉、階段、年輪、貞操、性差、主従。
 いっそ少女は篭の鳥、男は少女の飼われる窓の下、朝晩にそのさえずりだけを楽しみに行き向かう雇われのような。

 ひめさま、ひめさま、なぜないておられるのですか。
 男はしずかに三歩後ろ、跪き頭を垂れて。
 天は七色、祈る女神は白亜、紅い敷布、黄金の楽器。やかましいほど絢爛で、おそろしいほど静粛で。
 男は頭をただただ垂れて、ただ主君の断罪を。
 
 ないているのは、わたしじゃ、ないわ。
 やがて伸べられた手の甲にくちづけを。落ちた染みが一つ、白い手袋を汚して、男はあぁ、と呻いた。
 あなたはきっと、わたしのものよ。
 純白の少女が男の前に跪き、その額にキスを返す。
 それは、ひそやかな誓いの儀式。欲深い男に少女の精一杯の。
 ひめ、さま。・・・わたしの、ひめさま。

 いっそ少女は篭の鳥、そして男は、男は。

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