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PS版DQⅣ二次。
元魔王とエルフの彼女。
ピサロザvvピサロザvv
元魔王とエルフの彼女。
ピサロザvvピサロザvv
おまえは、あれに似ているな。
天蓋付きのベッドの上、雲でも詰めたかのように柔らかなスプリング、掛け布、背にした枕に埋まり、目の前の白い胸に頬を寄せていた。彼の手は飽く事なく自分の髪に触れ、その一房を掬って口付けがてら、その言葉はするりと。
あれ、では分からぬ。その意思を眼に込めて見上げれば、かの紅玉は少し細められ、ゆるく首を振った。違うな、あれがおまえに似ているのだ、と。
尚更分からぬと、ついに口に出そうとした瞬間、ひやりとしたそれが落ちてきた。塞がれて、囚われ、嬲られて、乱して。苦しくて掴んだ彼の銀の方がよっぽど細くさらりとしているのに、彼はそれでも自分の寝乱れほつれた髪に触れる事をやめようとしない。
そうして声を封じられたまま、彼の唇、掌、身体、心までもがこの肢体に沈んでいく。
絡まる、交わる、それはまるで自分を離さない鎖のよう、檻のよう。彼に抱かれるたびその銀にゆるやかに捕らわれ締め上げられる感覚は、自らの眼から零れ産まれる本物の紅玉より紅く美しい眼に魅せられる幻なのか、それとも。
ようやく唇を解放されても、もう何の言葉も意味を持たない。
全てが終わってもこんな抱き方しかしない彼を、少し寂しいと思った。
そうして、振り出しに戻る。
全てが終わって塔の上、天蓋付きのベッドの上、雲でも詰めたかのように柔らかなスプリング、掛け布、背にした枕に埋まり、目の前の白い胸に頬を寄せ。彼の手は飽く事なく自分の薔薇色の髪を撫ぜ。
あの頃は憎みすらした自分から零れ産まれる紅玉は、今はあの頃と違ってこの部屋に散りばめたりはしない。他の誰にも触れられない、本物で贋物の紅玉は、世界でたった一つ、彼の耳にだけ収まっていればそれでいい。
彼の指先が音もなく腰に触れる。ひやりとしたその感触が、更に彼の胸に身体を寄らせる。分かっているのにそれでも撫ぜ、ぽつりと、痩せたな、とだけ呟いた。
彼の居ない数多の夜、届かない唯一の祈り、そうして一度は途切れたこの命、この世のものとは思えない奇跡の花の香に寄せられて眼を開けばそこは現、そしてたくさんの人間と彼と共に歩いた世界。
太る理由はなく、痩せる理由なら様々でしょうと笑っても、彼は笑み返してはくれなかった。彼の本心からの笑みなぞ見た事もないけれど、けれど自分が笑えば、彼はそのこの世のものではない紅玉を揺らせるくらいはしたというのに。
彼の名を呼ぶ。その音は、触れられた紅玉が割れる音に似て。
その音に自分と同様気分を害した彼は、眉を顰めて口を開いた。
おまえは、本来ならば、森に生きて森に育ち、そうして森に見守られて逝くべきもの。
噛み合わない。いつもいつも、例え全てが終わっても、二人はいつでも振り出しに居て。見上げた色のない貌は、童話の中のお化けのようにつるりと。
あれの髪も眼も綺麗だった、あの中でならおまえは生きていけるのかと、初めて分かったのだ、続く彼の言の音は、子供に読み聞かす寝物語のように甘かった。
ようやっとあれ、の意味を理解する。森に生きる命、その森をまさに身中に収めたかのような緑の髪、翡翠の瞳、彼にすら届かなかった祈りを聞き、生命の花をその手で咲かせた人。
おまえは、捕らわれているだけだ。この魔物は、おまえの涙に興味がないだけだ。見上げた彼の貌、色のない肌、それきり動かない唇。
起き上がり、抱き締めれば、その身体は冷たさだけを伝えてきた。あれだけ交わっても、何度も何度も交わっても、その身体に熱を持たない事がそのせいならば。このせいだったならば。
抱かれている時に彼の魅せる幻、銀の糸にやわらかく捕らわれ締め上げられ、逃げられないようにと深い深い地の底の檻に繋がれて。
それは、彼の願い。望み。夢。欲望。
けれどそれに魅せられ、あいして、しまった。
あなたに生きてあなたに育ち、あなたに見守られて逝きたい。そうしてこの骸すら、あなたに絡め取られ食べられても、それはいっそ本望なのです。
伝えた言の音は、森で生まれる命のようにやわらかく。ああやっと、二人は振り出しから抜けたのだと、あの優しい人間達が守った世界にようやっと二人、産まれ変われたのだ、と。
彼も同じように思ってくれたのを感じたのは、そうして再び繰り返される、けれど終えた後にはきっとその先の見える交わりのくちづけ。
全てが終わって塔の上、天蓋付きのベッドの上、雲でも詰めたかのように柔らかなスプリング、掛け布、背にした枕に埋まり、絡まり絡まれ、銀の糸を繰って。
蜘蛛は糸を巡らせる。繊細にきららかに、いっそやさしく、魅せるがごとく。
寄せられて捕らわれた蝶は標本のよう、朽ちるまで美しいまま愛でられて、そうして枯れ果てる前に、どうぞ召し上がれ。
それが本望、なのです。
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