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どうしよう。銀魂熱が下がらんw
「万事屋よ永遠なれ」ネタバレ。
あ、pixivデビューは果たしました。
「万事屋よ永遠なれ」ネタバレ。
あ、pixivデビューは果たしました。
少し、気を失っていただけだったらしい。ふと意識が戻った瞬間、胸を突く痛みが鈍く響いた。
・・・ったく、てっきりこの世からオサラバできたかと思ってたのにコノヤロー。誰に向けていいのやら、敢えて言うなら自分になのか“自分”になのか、銀時は分からぬまま心中でだけ毒づく。
ただし、怪我の具合に比べて己の痛覚が伝えてくるそれはやはり遠いから。本当のオサラバまで、そう長くはないだろう。それにほっとする。ドSは痛みに弱いのだ。
「んで、さぁ」
ゆるゆると、精一杯の力を振り絞ってゆるゆると、銀時は俯けていた顔を上げた。
「なに、またイメチェンしたの? ちげぇか、そりゃコスプレか?」
目の前に静かに佇む、長髪の男を、見上げた。
目の前の男は、いつもの決まり文句を言う時と同じテンションであっさりきっぱり言った。
「過激攘夷派と言えばやはり奴のイメージが強いからな」
まぁだそんなくだらねぇことを、と声にならない声で銀時は呟く。将軍も幕府ももうあってないようなこの世の中、一体これ以上何を天誅するというのか。そしてこの終わりゆく世界で、攘夷を成してなんとするのか。
思うことは多々あれど、その全てをもう口に出すことは出来なさそうだから、一番言いたいことだけを選んで言う。
「つーかお揃いって、お前らどんだけ仲良しなんだよコノヤロー。俺は仲間はずれかバカヤロー」
目の前の長髪の男、桂と、その後ろに控えて煙管をくゆらせながらこちらを見下ろす男、高杉。二人を見やって、二人の片目に巻かれる白い包帯を見やって、銀時は口を尖らせた。
くつくつと、高杉が笑う。お前はどこまでも馬鹿だなぁと、笑う。何だ、お前もしたいならすれば良かったではないか、そんなにたくさん包帯があるのだから、と桂は相変わらず生真面目に明後日の方向に突っ込む。ま、してたはしてたよ、その代わり片目どころか顔中ぐるぐる巻きの方だけど、と銀時は一つ息を吐き出した。
二人が銀時に歩み寄ってくる。そして背を向けて、階段の一段上に座り込んでいる銀時のその足元に座り込む。銀時の両膝に、二人の肩が触れた。
何ともまぁ、懐かしいことを。銀時の頬は緩んだ。昔々の遠い昔、三人で、四人で、もっと大勢で、膝突き合わせて肩組んで飲み明かす日々があった。斬って斬って斬り捨てて、血に塗れて血を流して、命を壊して壊して心を壊して。それでもただ、飲んでいる時だけは楽しかった。
二人とも、同じことを思い出していたのだろう。高杉がおもむろに懐に手を突っ込み、酒瓶を引っ張り出してきて一口呷った。飲むか?と瓶を振れば、横から桂が手を伸ばし、もらおう、と口を付ける。
俺も欲しいと銀時も手を伸ばしたいが、ただもうその力が残っていないようだった。情けない顔で桂を恨めし気に睨むと、仕方のない奴だ、と呆れたように桂は笑い、瓶の口を銀時に突っ込み、一気にぐいっと中身を流し込んできた。余りの勢いについつい咽て、てめぇ俺を殺す気か、と噛み付けば。高杉が横から、てめぇら俺の分も残しとけよ、と瓶を取り上げていく。
そんな光景が、過去に何度も繰り返してきたその光景が、今でもやっぱり楽しくて、銀時は笑った。笑って笑って――二人の肩をそっと、握り締めた。
「――もう、逝くのか」
桂が、掴まれた肩と反対側の手を伸ばして、銀時のその手をぎゅっと握った。高杉も、同様だった。
ああ。頷いた声は音になったのか。分からなかったけれど、二人の手の力が強まったから、銀時はもうそれでよかった。
「――先生に、よろしくな」
柔らかい、まるで初めて聞くような、高杉の、柔らかい声。
ああ、そうだな。だけど――
「・・・自分で、言えよ」
銀時の目の前に背を向けて座る二人の、白い髪が、風に、揺れていた。
ごめん。それと、ありがとう。今度こそそれが音になっていないことを知りつつも、銀時はそのまま静かに、目を閉じた。
そうして、後に残った二人は。
一人は俯き加減に目を逸らしたまま押し黙り。一人は天を見上げながら手にした煙管をくゆらせて。
肩に置かれた手を握り締めながら。
世界の終わりを、待ち続けたのだった。
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