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* それはとても、晴れた日で *

かきたいときに、そのときかきたいことを無節操に。

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【BR二次】きみとの距離はどのくらい【七典】
…あれ?えっと…銀魂…沖→土→←ミツとか…終さん含めた武州組とか…そういうの…
いやまあ、書くけどね。いつか形にはするけどね。
早くしないと今度はセカコイ最新刊&劇場版DVDが届いちゃってそっちに萌え滾る予定だし///

久々にBRの世界に触れてみて、七典って今どうしてんのかなーって考えたら案外するすると筆が進んでしまったおはなし。
だってほら、川田さんだけじゃ不公平じゃない?!←誰に対する言い訳かw
話の中で使ってるアニメは旧エヴァです。しかも劇場版じゃなくてあの台詞出たのはTV版っていうw







 かの大東亜共和国が倒れてから、もう大分時は過ぎた。
 秋也と典子は、今でも二人、合衆国で暮らしている。
 戻らないのか、と、大東亜が倒れて暫くは、仲間たちに会う度にそう言われ続けた。
 しかし秋也には、初めからその選択肢は存在しなかった。
 勿論、大東亜が倒れると同時に秋也たちにかけられた全国指名手配は解かれている。秋也たちの帰国を“法的に”阻むものは何もない。
 けれど、だ。
 秋也たちは、余りにも有名になり過ぎてしまった。
 過去から当時に至るまで、誰一人として叶わなかった唯一のプログラム脱走者。そして、“一国を滅ぼした英雄(テロリスト)”の一員。
 ……典子の夢は、教師になることだった。あの日あの時秋也と川田に語った、その気持ちをずっと変わらず抱き続けていることを一番近くに居た秋也はとても良く知っていた、そう、とても。
 典子は合衆国に渡った後、語学の壁にもめげずに勉強を重ね、大東亜が倒れた当時には既に合衆国での教員免許を取得し、教壇に立っていた。運転免許が違うように合衆国での教員免許をそのままは使えなくとも、きっと大東亜でも典子ならすぐに資格を取れただろう。
 しかし。
 いくら大東亜ファッキン共和国はもうなくなり、国際会議から派遣された有識者たちが混乱する内政を治め自治の道筋を示し、当たり前の、インターナショナル水準にあの国を引き上げたとしても。
 人の心は。感情は。そううまくは動かないものだ。


 これは大東亜だろうと合衆国だろうと世界どの地域でも共通していることとして、人は“前科者”に厳しい。
 そう、“前科者”なのだ、秋也も、典子も、あの旧大東亜共和国では。


 “一国を滅ぼした英雄(テロリスト)”たちは、基本その名の通り、新生大東亜共和国では英雄扱いだ。メンバーの中には新政府にも名を連ね、現在でも活躍を続けている者も居る。
 しかし、メンバーの中でも“プログラムの生き残り”であった者たちは、ほとんどが表舞台には立たずに故郷からも遠く離れた土地で静かに暮らしている。
 人を殺した者を、それも一人ではなく複数人、しかも友人であった人たちを殺した者を、例えそれが仕方のない状況であったとしても極限の状況であったとしても、人は本能的に恐怖する、忌み嫌う。それが自分の身内となれば加えて憎しみがこもる。
 法で裁くことは出来ない、それでもそれは確かに“罪”だった、人々の中で、そして、当人たちの中でも。
 その中でも特に、秋也と典子には“脱走者”というもう一つの“罪状”があった。真実はそれとは程遠いのだけれど、やはり、“友人を見捨てて自分たちだけ逃げ出した”というレッテルはどこまでもどこまでも付き纏う。……それは全く真実ではないのだ、とは言い切れない後ろめたさは、取り除けない。
 とにかく色んな意味で、秋也と典子は“有名過ぎた”のだ。そしてそれは哀しいことに、典子の夢を阻むものでしかなかった。


 特にそんな細かい理由は告げず、このまま合衆国に留まらないか、とだけ言った秋也に、典子はただ頷いた。そうね、と言って頷いた。
 表通りに面したカフェテリアのバルコニーに降り注ぐ陽射しは強くて典子の表情は良く見えなかったけれど、しかしそのまま、今に至っている。


          ***


 あれからそれなりの時が過ぎた。かの国も今では元々持っていた技術力を国際競争で更に磨き、世界有数の輸出国として成功している。
 そしてもう一つ、最近では文化面でも注目を浴びている。
 漫画、アニメ、小説、ゲーム…たくさんのコンテンツが国内で盛り上がり、世界に出て行き、世界中からそのクオリティが評価されつつあるのだ。
 かの国が復興を始めてから暫くして、爆発的にたくさんの作品が産み出された。それは、今まで抑圧されて来たクリエイターたちの魂の雄叫びだったのだろう。そしてそれは同じように抑圧されて来た人々の代弁でもあった、だからみなが夢中になって一大ムーヴメントとなったのだった。
 休日だった典子を誘って今秋也たちが観て来た映画も、その一大ムーヴメントの中でも特に熱狂的に盛り上がり、海外に飛び火した途端世界中からも注目を浴びたアニメ映画だった。
 凄かったわね、と隣りを歩く典子がやや興奮に頬を染めながら秋也を見上げる。その手にはしっかりパンフレットも握られていて、ハリウッドにも負けてなかったわ、と続けて言い募る典子の姿に、秋也は少し笑ってしまった。いつの頃からか余り感情の起伏を見せなくなり、常に穏やかさを纏い続けている典子にしては、酷く珍しい姿だったのだ。
 あ、笑ったわね、とこれまた珍しく少し拗ねた顔を見せた典子に、また秋也の頬が緩む。二人、もう長い時間を一緒に生きて来た、その長い時間のほとんどが哀しみと苦しみを分け合って埋め合う関係だったけれど、今だけ少し、ほんの少し、あの遠い遠い、二人がまだ道を共にする前の時間に戻ったような気がしたのだ。
 だから、ついついするりと、秋也の口から言葉が零れてしまった。
 「“生と死は等価値”だって言ってたけど、そいつはやっぱり綺麗事に聞こえたな、俺は」


 いつの頃からか……そう、多分典子が感情の起伏を余り見せなくなったのと同じ頃、それは典子が教師になって初めて担当クラスを持った頃、かの国が倒れた混乱がようやく収まろうかとしていた頃から、何となくお互い、あの時のことを口に出すことはなくなった。
 勿論忘れたわけではない。この銃社会の合衆国では当たり前に起こる、夜に時折響く銃声に何度も飛び起きては二人身を寄せ合って眠る、そういう共有は今でも続いている。
 ただ、言葉にはしなくなった。
 言葉にしなくても分かり合えているから。勿論それもあるだろう。どちらかがあの時のことを、彼らのことを、ふと思い出しては膝を抱えていればもう一人は黙って寄り添い、己もまた思いを馳せては気持ちを共有する、それくらいのことは互いに出来る。
 けれど、それだけではないように秋也は感じていた。それだけではないなら他に何が、と問われると答えられない、何となく、という曖昧であやふやな感覚でしかないのだけれど、けれど確かに、秋也はそう感じていた。
 言葉にすることを典子は避けている、それは同時に、自分自身も、と。
 こんなにも長い時間を、はっきり言ってしまえば共依存と呼べるこんな関係を続けておきながら、結局自分たちは一人同士なのだと秋也は思う。それが寂しいことなのか当たり前のことなのか、秋也には未だ分からない。


 「…綺麗事?」
 先ほどまでの興奮がまるで嘘のように、普段通りの静かな表情で典子は秋也を見つめた。口にするべきではなかったと訳もなくばつが悪い気になるのだけれど、一度口に出した言葉は取り消せない。少しの逡巡の後、結局秋也は、最低限の言葉だけを選んで返した。
 「だって、そうは思わないかい」。……我ながら、大層幼稚な返答だとは思うのだけれど。けれど思うのだ、だって、そうは思わないかい、――生きる辛さを、死への安らぎを、それでも本能が怯える恐怖をいやというほど知る君と僕ならば。
 週末の、映画館からメトロへと続く通り沿いは酷く騒々しかった。誰も彼もが先ほどまでの典子のように興奮して口々に映画の感想を言い合っている。それでも秋也には典子の静かな言葉が聞こえたし、それならば自分の少し言い訳めいた言葉も典子へ届いているだろう、落ちる沈黙に、秋也は言葉を重ねることはしなかった。
 だからこのまま、また何事もなかったように日常へ、二人依存を重ねながらも決して癒えない痛みを隠すことばかり上手くなった日常へと戻るものだと思っていたから、更に言葉を重ねて来た典子に少なからず秋也は驚いた。
 「わたしは、そうは思わないわ」
 あの頃はさほど身長差はなかったが、今では秋也は頭一つ分少々典子より背が高い。ちょうど自分の肩口ぐらいの典子を見やるが、典子は視線を真っ直ぐ前に向けていて、秋也からは頭頂の旋毛しか覗えない。
 それでも何となく、秋也はその表情が分かる気がした。はっきりとした、強い言葉だった。まるであの時――やぶ蚊飛び交う茂みの中で、今でも感謝と尊敬の念が消えないあの男からかの国の暗部を聞いた時、そしてそれは案外自分たちの民族性がそうさせているのかもしれないと皮肉った時、そんなことはないと声を上げた時と同じような強さだった。
 「赤ちゃんが産まれた時、周囲の人は喜んで泣くでしょう。親しい人が亡くなった時、周囲の人は哀しんで泣くでしょう。どちらにしても人が泣くのは一緒だし、それはつまり、喜びと哀しみは表裏一体だからだと思うの」
 典子の言葉は続く。真っ直ぐ前を見据えたままに。
 「生きていくことは…辛いわ。今でも時々、…何でわたしだけって、申し訳なくてどうしようもなくなる。でもそう思うのは、……生きていることが、わたしにとって、喜び、だから」
 ――生きていることが、喜びだと。それを言葉にすることは、どれだけの苦しみを伴っただろう。典子は、秋也は、四十人の犠牲の上に生きている、大切だった人たちの犠牲の上に生きている。それを憎む人たちが居て、それを赦せない人たちが居て。大切な彼らを失った哀しみ、救えなかった苦しみを背負う余りに、いつから自分たちは…自分は、生きていることに罪悪感を覚えるようになったのだろう。人混みではぐれないように繋いでいた手を、秋也はきつく握り締めた。
 「死んでしまうことは易しいのかもしれない。辛いことから解放されるし、…もしかしたらまた、みんなに会えるのかも、しれない」
 そしてあの頃の続きをもう一度。眩しい教室で机を並べて、昨夜見たドラマの話とか誰が好きとか将来の夢とか、他愛もない話を延々と。行けなかった修学旅行にも行って。そんな夢を今でも時々秋也は見る。そして目覚めと共に襲いかかる絶望感に涙するのだ。
 「だけどやっぱり…死んでしまうのは哀しい。辛い。望んでしまう時もあるけれど、そっちの方が苦しくないのかなって思う時もあるけれど…、――秋也くんと時間を重ねられなくなることは、やっぱり辛いわ」
 二人、もう長い時間を一緒に生きて来た、その長い時間のほとんどが哀しみと苦しみを分け合って埋め合うだけの関係で、ただそれだけの関係でしかなかった。けれど秋也は、典子がずっと自分を愛してくれていることを知っていた、そして秋也自身も、もうずっとずっと前から典子のことを、“親友の好きだった女の子”ではなく、“一人の女性”として、愛していた。
 お互い、言葉にすることはなかったけれど。罪深くて、このぬるま湯のように心地良くて物足りない世界が余りに惜しくて。
 けれど典子はついにそれを言葉にした。はっきりと強く、秋也への想いを口にした。途方もない罪悪感と苦しみのその上に。
 据え膳食わぬは男の恥だぜ、とあの遊び歩くくせに芯には頑固なほどの純心を持った男(その頑固さが彼の最期を招いてしまったのは残念でならない)の声を甦らせるより前に、秋也は背後から典子を抱き締めていた。
 一瞬驚いたように身を固くした典子だったけれど、ゆっくりとその力を抜いて、己の首元に回った秋也の腕に指先でそっと触れた。そして指は愛おしそうに肌の上をなぞっていく。それは酷く気持ちが良かった。
 「…わたしにとって、生きることは辛いけれど、喜び。死んでしまうことは、安らぎだけれど、哀しみ。ううん、多かれ少なかれ、それってみんな一緒だと思うの」
 それを等価値と呼んでいいのか分からないし、そもそもあの話ではそういう意味では言ってなかったけれど。そう、結局表情は見えないけれどきっとあの頃のようにお茶目にいたずらっぽく笑っているのだろう、そうやって話を締め括った典子を抱き締める腕に、秋也は一層力を込めた。


 典子。
 きみは、強くなっていたんだね。
 ぼくよりずっとずっと先の道を、“あの頃”も“あの時”も全てを一人で抱えて歩いていたんだね。
 そうしてきみはずっとずっと、何も言わずにただ、ぼくを待ってくれていたんだね。
 ……まだきみを後ろからしか抱き締められないぼくがきみに追い付くまで、もう少し、待っていてくれるかい。


 秋也は、己の腕をなぞり続ける典子の指先をさらって、指先に一つ、キスを落とした。
 尊敬と情愛と、誓いを込めて。



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得てしてオナゴの方が精神年齢は高いものです。
頑張れ秋也☆彡


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