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わたしの理想の女性の1人。
でも、今深夜でやってるアニメの声はちょっと違う・・・かも。
キャラもなんというか・・・小娘臭がちょっとな。
でも、生々しいポロリは嬉しいから支援支援!
でも、今深夜でやってるアニメの声はちょっと違う・・・かも。
キャラもなんというか・・・小娘臭がちょっとな。
でも、生々しいポロリは嬉しいから支援支援!
・・・・・・・・・・・・
その言葉を失くしてから、どれだけの時が経ったのだろう。
リッツ・カールトン・スイートから見下ろす夜景は俗に言う宝石箱をひっくり返したような。
今わたしが持っている全てをこの部屋にぶちまけても、きっと同じきらめきには足りない。
そう思うと、1ヶ月ほどかかってやっと手に入れた美しいイエローダイヤのリングに、何の魅力も感じなくなってしまった。
引き抜いて放り投げる。敷き詰められた毛足の長い絨毯がそれを飲み込んだ。チップ代わりにちょうどいい。そう、もうそれは、わたしにとってはそれだけの価値しかない。
バスルームへと足を向けた背に、低い溜め息が吹き付けられた。
「飽きやすい女なんだな」
「こんな夜に、加工物(ツクリモノ)なんて無粋と思っただけよ」
振り返る気はない。侵入者の顔なんて見たくもない。たった指輪一つに1ヶ月なんて長い仕事になったのも、そもそもはこの声の主のせいなのだから。
「欲しければ、あげるわ」
ひらり、後ろ手で手を振ってバスルームの扉を閉じる。鍵はかけても意味がない。この男の前には。
ローブを肩から落とした瞬間に、猿みたいに長い腕が背後から絡みつく。さすがにちょっとうんざりした。
「ねぇ、戻ったばかりなの。疲れてるのよ」
あなたのせいで、としっかり言外に込める。それでも男の唇がうなじに触れるのを感じて、深い深い溜め息がこぼれた。
「くれるって言ったじゃないか」
薄いてのひらが腰をなぞり、骨ばった指先が、左の太腿を何度も上下に往復した。その動作で思い出させられる。初めてこの男と獲物を獲り合ったあの日、ルージュで刻まれた予告状。
「ダイヤのはなしよ」
「俺が欲しいのはダイヤじゃない」
即答に肩を竦めた。でも、疲れているのは本当。そして、“それ”をあげる気はさらさらない。特に、こんな夜には。
「あなたには、あのダイヤぐらいがお似合いだわ」
触れられる前に胸の谷間に指を差し込み、細いスプレー瓶を抜き取って首筋にしゅっと一吹き。甘い甘い香水の匂いが立ち込める頃には、背後の気配はすっかり消えていた。
バスルームから出てみると、リビングルームのテーブルの上に、ちょこんとベルベットの小さなケースが置いてあった。
大体の予想がつきつつもそれを空けてみると、案の定そこには先ほど放り出したばかりのイエローダイヤのリング。ご丁寧に添えられたメモはもう流し読みでいい。・・・世界一美しいきみへ、世界一美しいダイヤを。何のひねりもなさすぎてあくびしか出ない。
全てをテーブルに放置したままベッドルームへ向かうと先客が居た。いや、先ほどの招かれざる客が待ちくたびれていた。
「・・・あなたらしくないわね」
暖炉の火種にした方がよっぽど有意義なラブレターも、今夜の引き際の悪さも。
それでも男はにやにや笑いながらシーツの端を持ち上げた。それを無視して窓際のソファへ移動する。ピアニッシモを銜えた瞬間、手品のような手つきで火が差し出された。ついつい、ありがとう、と言いそうになり、慌てて喉奥で飲み込む。
男もソファへ腰を落ち着けた。暇な時間にボーイを呼んだのか、それとも自分で作ったのか、手の中にはいつのまにかロックグラス。どちらにしても部屋に付けているはずだから、帰る前にきっちり請求しようと頭の中に付箋を貼る。
結局肌に何かを纏う間もないまま、そもそも部屋で休む時に何かを身に纏う習慣などないのだけれど、素肌のままのわたしの肩を何でもないように抱いて男は愛の言葉を囁く。全く聞くに値しない言葉の羅列。歯が浮いているどころか単語の一つ一つすら浮ついた、台詞の上っ面を撫でているだけの言葉。当たり前だけど中身なんてすっかすか。
もっとも、中身ある言葉なんてもっと聞くに値しないのだけれど。
いい加減男の中の愛の辞書も尽きたのか、突き出された唇が近付いてくる。この男はわたしをどれだけ安く買い叩こうというのか。無視して火の付いたピアニッシモを吸い付けることで、男の唇を突き放す。
男は苦笑を口端に乗せ、あの男はもっと安くおまえを手に入れただろう、と拗ねたように言う。
リビングに放置したままのイエローダイヤの持ち主だった伯爵と世紀の大泥棒。わたしに言わせればどちらも大した価値はないのだけれど、対価を支払った(支払わさせた?)という点で伯爵の方が上よ。
そう突き返せば、男はにやっと笑った。対価があればいいのか。しかしそれは、この世で一番高い買い物だろう、と。
そうだろうと思う。そしてそれは、この男には一生を懸けても手に入れられないもの。なぜなら、それは“彼自身”なのだろうから。そして男は自身を売る気なんてない。あくまで男は全てを“手に入れる”側なのだ。
だから男には支払える対価がない。対価がない以上、わたしが男に与えるものなど何もない。
誰にだって微笑みかけるわ。
必要とあらば。
誰にだって口付るわ。
必要とあらば。
誰にだって跪き、誰のつま先にだってキスをするわ。
必要とあらば。
誰にだってこの身を捧げ、股を開き、何なら“愛”してだってあげるわ。
必要とあらば、ね。
“愛”なんて1セントの価値もないけれど。
パウダールームの鏡の前につく。鏡に映る女はわたし。峰不二子という女。
わたしはわたしの美しさを正しく理解している。いつも、常に、ずっと昔から。
ずっとずっと遠い昔、わたしはただひたすら鏡に映る自分を眺めていた。古びた鏡台に向かって、日が暮れるまで、日が暮れても、ただ鏡に映る自分を眺めていた。
だからか今でも、こうして鏡の中の自分と向かい合うと、あの部屋に戻ったような錯覚を覚えることがある。
古い畳の匂い、使い込まれた箪笥の木の艶、障子の向こうから聞こえる虫の声、祖母の作る夕餉の香り、丸い鏡のついた鏡台。リッツのスイートとは全くの真逆、でも今、わたしの感覚はあの部屋に戻っている。
目の前に転がっているルージュに手を伸ばす。あの日そうしたように。紅いその色を初めて塗ったのもあの鏡台の前でだった。
あの日紅を乗せたわたしはとてもひどく怒られた、けれど今はそれを讃えられることは星の数あれど、怒る人などもう居ない。
――――おまえはきれいだ、ほんとうにきれいだ、だからこそ奥ゆかしくあれ、獣に食い荒らされぬよう。
あの日、そう怒られたわたしは、今ではその美しさを凶器に、獣を食い荒らしている。
それがわたし。峰不二子という女。
その言葉を失くしてから、どれだけの時が経ったのだろう。
*
リッツ・カールトン・スイートから見下ろす夜景は俗に言う宝石箱をひっくり返したような。
今わたしが持っている全てをこの部屋にぶちまけても、きっと同じきらめきには足りない。
そう思うと、1ヶ月ほどかかってやっと手に入れた美しいイエローダイヤのリングに、何の魅力も感じなくなってしまった。
引き抜いて放り投げる。敷き詰められた毛足の長い絨毯がそれを飲み込んだ。チップ代わりにちょうどいい。そう、もうそれは、わたしにとってはそれだけの価値しかない。
バスルームへと足を向けた背に、低い溜め息が吹き付けられた。
「飽きやすい女なんだな」
「こんな夜に、加工物(ツクリモノ)なんて無粋と思っただけよ」
振り返る気はない。侵入者の顔なんて見たくもない。たった指輪一つに1ヶ月なんて長い仕事になったのも、そもそもはこの声の主のせいなのだから。
「欲しければ、あげるわ」
ひらり、後ろ手で手を振ってバスルームの扉を閉じる。鍵はかけても意味がない。この男の前には。
ローブを肩から落とした瞬間に、猿みたいに長い腕が背後から絡みつく。さすがにちょっとうんざりした。
「ねぇ、戻ったばかりなの。疲れてるのよ」
あなたのせいで、としっかり言外に込める。それでも男の唇がうなじに触れるのを感じて、深い深い溜め息がこぼれた。
「くれるって言ったじゃないか」
薄いてのひらが腰をなぞり、骨ばった指先が、左の太腿を何度も上下に往復した。その動作で思い出させられる。初めてこの男と獲物を獲り合ったあの日、ルージュで刻まれた予告状。
「ダイヤのはなしよ」
「俺が欲しいのはダイヤじゃない」
即答に肩を竦めた。でも、疲れているのは本当。そして、“それ”をあげる気はさらさらない。特に、こんな夜には。
「あなたには、あのダイヤぐらいがお似合いだわ」
触れられる前に胸の谷間に指を差し込み、細いスプレー瓶を抜き取って首筋にしゅっと一吹き。甘い甘い香水の匂いが立ち込める頃には、背後の気配はすっかり消えていた。
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バスルームから出てみると、リビングルームのテーブルの上に、ちょこんとベルベットの小さなケースが置いてあった。
大体の予想がつきつつもそれを空けてみると、案の定そこには先ほど放り出したばかりのイエローダイヤのリング。ご丁寧に添えられたメモはもう流し読みでいい。・・・世界一美しいきみへ、世界一美しいダイヤを。何のひねりもなさすぎてあくびしか出ない。
全てをテーブルに放置したままベッドルームへ向かうと先客が居た。いや、先ほどの招かれざる客が待ちくたびれていた。
「・・・あなたらしくないわね」
暖炉の火種にした方がよっぽど有意義なラブレターも、今夜の引き際の悪さも。
それでも男はにやにや笑いながらシーツの端を持ち上げた。それを無視して窓際のソファへ移動する。ピアニッシモを銜えた瞬間、手品のような手つきで火が差し出された。ついつい、ありがとう、と言いそうになり、慌てて喉奥で飲み込む。
男もソファへ腰を落ち着けた。暇な時間にボーイを呼んだのか、それとも自分で作ったのか、手の中にはいつのまにかロックグラス。どちらにしても部屋に付けているはずだから、帰る前にきっちり請求しようと頭の中に付箋を貼る。
結局肌に何かを纏う間もないまま、そもそも部屋で休む時に何かを身に纏う習慣などないのだけれど、素肌のままのわたしの肩を何でもないように抱いて男は愛の言葉を囁く。全く聞くに値しない言葉の羅列。歯が浮いているどころか単語の一つ一つすら浮ついた、台詞の上っ面を撫でているだけの言葉。当たり前だけど中身なんてすっかすか。
もっとも、中身ある言葉なんてもっと聞くに値しないのだけれど。
いい加減男の中の愛の辞書も尽きたのか、突き出された唇が近付いてくる。この男はわたしをどれだけ安く買い叩こうというのか。無視して火の付いたピアニッシモを吸い付けることで、男の唇を突き放す。
男は苦笑を口端に乗せ、あの男はもっと安くおまえを手に入れただろう、と拗ねたように言う。
リビングに放置したままのイエローダイヤの持ち主だった伯爵と世紀の大泥棒。わたしに言わせればどちらも大した価値はないのだけれど、対価を支払った(支払わさせた?)という点で伯爵の方が上よ。
そう突き返せば、男はにやっと笑った。対価があればいいのか。しかしそれは、この世で一番高い買い物だろう、と。
そうだろうと思う。そしてそれは、この男には一生を懸けても手に入れられないもの。なぜなら、それは“彼自身”なのだろうから。そして男は自身を売る気なんてない。あくまで男は全てを“手に入れる”側なのだ。
だから男には支払える対価がない。対価がない以上、わたしが男に与えるものなど何もない。
誰にだって微笑みかけるわ。
必要とあらば。
誰にだって口付るわ。
必要とあらば。
誰にだって跪き、誰のつま先にだってキスをするわ。
必要とあらば。
誰にだってこの身を捧げ、股を開き、何なら“愛”してだってあげるわ。
必要とあらば、ね。
“愛”なんて1セントの価値もないけれど。
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パウダールームの鏡の前につく。鏡に映る女はわたし。峰不二子という女。
わたしはわたしの美しさを正しく理解している。いつも、常に、ずっと昔から。
ずっとずっと遠い昔、わたしはただひたすら鏡に映る自分を眺めていた。古びた鏡台に向かって、日が暮れるまで、日が暮れても、ただ鏡に映る自分を眺めていた。
だからか今でも、こうして鏡の中の自分と向かい合うと、あの部屋に戻ったような錯覚を覚えることがある。
古い畳の匂い、使い込まれた箪笥の木の艶、障子の向こうから聞こえる虫の声、祖母の作る夕餉の香り、丸い鏡のついた鏡台。リッツのスイートとは全くの真逆、でも今、わたしの感覚はあの部屋に戻っている。
目の前に転がっているルージュに手を伸ばす。あの日そうしたように。紅いその色を初めて塗ったのもあの鏡台の前でだった。
あの日紅を乗せたわたしはとてもひどく怒られた、けれど今はそれを讃えられることは星の数あれど、怒る人などもう居ない。
――――おまえはきれいだ、ほんとうにきれいだ、だからこそ奥ゆかしくあれ、獣に食い荒らされぬよう。
あの日、そう怒られたわたしは、今ではその美しさを凶器に、獣を食い荒らしている。
それがわたし。峰不二子という女。
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