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萌えに燃えて妄想こねくり回すのももどかしく書き綴った初銀魂。
紅桜篇。
紅桜篇。
「退路は俺たちが護る」
そう言って、今の仲間たちを遠ざけた。
それは、これから始まる殺戮を見せないため。
普段は見せない“鬼”の顔を見せないため。
過激派であった頃の桂ならともかく、今の桂は例え幕府の手の者でも真選組でも、斬り合いになったとてその命を奪うことは少ない。“逃げの小太郎”の渾名は伊達ではない。
銀時も然り、そもそも普段ぶら下げている木刀では、何も斬れない。無闇に斬らないための、それだ。
しかし二人とも、こと天人に関しては、訳が違う。
片や異星のペンギンお化けを相棒とし、片や異星の戦闘民族を家族として受け入れている。
“あの頃”とは違い、全ての天人を憎んでいるわけでは、もはやない。
しかしそれでも、己らに立ち向かってくる天人、己らの仲間・友人・生活・・・護るべきものを奪おうとしてくる天人に、歯止めをかけるのは、やはり難しい。
過去、二人が――いや、三人が共有した、護りたかった人を護れなかった、天人襲来から始まる怨嗟は、血流として絶えずその身の中を巡っているのだから。
普段の戦闘とは違う。戦意を削ぐ致命的な一撃で仕舞いにはならない。出来ない。
――血の雨が、降る。
高見から、吐き出す煙の向こうの血の海を眺める。
背を合わせて血を降らせる二人を眺める。
高杉の、包帯に覆われた今は亡い瞳が、そこに過去を重ねた。そこに、己の姿を見た気がした。
――二度と“同志”なんて呼び方をするんじゃねェ。・・・そんな甘っちょろいモンじゃねーんだよ、俺たちは。
妖刀と共に滅んだ男に、つい先ほど投げた言葉。
“同志”でないのなら、なら、何だと言うのだ。くっ、と口元が歪む。
――“仲間”だと思っている。昔も、今もだ。
先ほどの桂の言葉が思い返される。昔も、今も、変わらない生真面目な眼差しだった。
昔から、三人三様だった。桂は真っ直ぐで素直で堅物、銀時はその真逆の捻くれ者の不真面目野郎、自分は・・・・・・自分は、二人から見てどうだったのだろうか。そんな三人が、何故ああも日がな一日、喧嘩ばかりしながらもつるんでいたのだろうか。
たった一つの共通点。――松陽先生。三人とも、松陽先生が、大好きだった。
「「全力で、てめぇ/貴様をぶった斬る!!」」
あの頃と変わらぬ暴虐さで天人どもを血祭りにあげ、あの頃と変わらぬ真っ直ぐな二つの双眸に射抜かれて、高杉は、何だかもう嗤うしかないような気がした。
・・・変わったのは俺か、お前らか。
・・・自分が変わったとは思えねぇ。俺が見ているものは昔から何も変わっちゃいねぇ。
・・・けど、あいつらだって、何も、変わっちゃいねぇ。
――“いつから違った、俺たちの道は?”・・・しらねーよ。俺が、聞きてぇよ。
*
「“全てをブッ壊す”とか言うけどさぁ」
「・・・あいつ」
「“全てをブッ壊した”後は、どうなるんだろうなぁ」
桂の腰に巻き付き江戸の上空を飛びながら、銀時は、ぽつりと呟いた。
松陽の遺した教本を手に物思いに耽っていた桂は、その声に我に返って銀時を見やる。腰にしがみ付く男の顔は、頭上からでは窺えない。
「俺が護るものは、昔も今も変わらねぇ」
「・・・先生との、約束だ」
約束。松陽が連れ去られる時、交わした約束。桂は、その約束の内容を知らない。知らないが、分かる気はする。
あの頃、攘夷戦争の頃。誰よりも先に戦に飛び出し、誰よりも後に帰ってきた。誰かを失う度、その目に広がっていった絶望。その目が絶望に染まり切り、深淵を覗かせる空洞と化した時、戦争は終わり、そして銀時は姿を消した。
――よもや、生きていたとは。
攘夷志士を纏め上げ、攘夷党を結成して攘夷活動を続けながらも、桂はずっと銀時を探していた。郷里から始まり、廃村、路地裏、敗残の者が固まっている集落、ありとあらゆる“死に場所”を探して歩いた。それほどに、終戦時の銀時からは生気が感じられなかった。
――それがまさか、十年も経った後の江戸で見付かるとは。
昔と変わらぬだらしのない笑みと、纏う空気。それでも、あの頃よりは大分ましとは言え、その目は相変わらず死んだ魚のようで。
けれど、新しい“仲間”と・・・“家族”を、得ていて。
それを護ろうとする時、確かにその目の中に光を見た。戦争に赴いた当初のような、いやそれよりも以前、自分たちと共に、松陽先生の教えを受け穏やかに暮らしていた時のような。
「全力でぶった斬るーなんて言ってはみたものの」
「それじゃあ、約束が守れねぇ」
「・・・俺には多分、やっぱり、あいつは斬れねぇよ」
「それでもあいつが、俺の護るモンに手ぇ出すんなら、斬らなきゃなんねぇけどよ」
「うっかり街ですれ違ったぐれぇじゃあ、やっぱり、斬れねぇよ」
遠い目で呟く銀時のもじゃもじゃ頭に、そっと桂は手を乗せた。
「・・・俺もだ」
“友”を斬れるわけ、ないじゃないか。人一倍、失うことの痛みを知る、俺と、お前と・・・・・・あいつが。
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