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* それはとても、晴れた日で *

かきたいときに、そのときかきたいことを無節操に。

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【おそ松さん二次】HappyLife!【5話救済】
くっそ…!くっそ…!
なんつーか、こういう商売はあざといと思うのよ、ホラお前らこういうの好きなんだろ、的なミエミエな釣り針はすっげームカつくのよ…!!
そして分かっていてそれに釣られる自分が一番ムカつくのよ…!!!!

5話救済?というか何というか。
もうカラ松のことも一松のことも十四松のことも愛でたい、でもそこまで来たならおそ松兄さんもチョロ松もトド松も愛でたい、だってお好きな松なんて選べないもの…!!
そんな欲望だけを詰めました。全てのおそ松さんGirls(何より自分)に捧ぐ。





 十四松の毎日は幸せだ。


 朝。たまには早起きして外をランニングしたりするけれど、大抵は兄弟の誰よりも起きるのが遅い。というか、起こされるまで寝ている。
 一人、また一人と起きだして、少しずつ広くなっていく六人用の布団を、掛け布団を身体に巻き付けながらゴロン、ゴロンと転がっていく。
 他の五人が全員居なくなって、グルグルの簀巻きになりながらゴロゴロ回っていると、必ず二つ上の兄が声をかけてくれる。

 「ほら十四松! もう朝…っていうか昼だよ! 遊んでないでご飯食べるよ!」

 そうして簀巻きになった布団から十四松を助け出して、一緒に布団を片付けるのだ。
 十四松の二つ上の兄、六つ子の三男坊は何かと苦労性で、布団を畳みながら最近では毎日にように溜め息交じりで今日もハローワークだの夕方から面接だけど大丈夫だろうかだのさっき電話が来て先週の面接落ちちゃっただのぼやくけれど、時々ひどく楽しそうに、今夜はニャーちゃんのライブだから楽しみだとか、今日はおそ松兄さんが新台打ちに行ったからうまくいったら晩ご飯はお寿司が食べれるだとか言っては笑う。
 十四松は、そんな兄との毎朝の会話がとても楽しい。兄が楽しそうに笑う日は特に嬉しい。
 十四松は、二つ上の兄が大好きだった。


 昼。ほんの一、二時間前に朝ご飯を食べたばかりでも、松野家のとっくに育ち盛りは過ぎたはずの六つ子はお構いなしでちゃんと昼ご飯もしっかり食べる。
 さてそろそろ身体を動かしたくなってきたと思って十四松が居間を見回せば、一番上の兄が寝そべりながボケっとTVを見ていたので、十四松は迷わずどーんと兄にぶつかっていく。

 「いったいよ! 何だよ十四松!」

 ねえ兄さん遊ぼう、野球しよう、プロレスでもいいよと色違いのパーカーを引けば、一番上の兄は必ずまず渋い顔をしてみせる。
 やだよ、疲れるよ、兄ちゃんこの昼ドラの続きが見たいんだよ、そう言って背を向けるけれど、十四松が百回くらい兄さん兄さんと連呼しながら服を引っ張り続ければ、最後は必ず、あーもう分かったよ!と振り向いてくれる。
 そうして立ち上がって鼻の下をこすりながら、俺は兄ちゃんだからな、と笑う。
 十四松は、そんな兄と遊ぶのがとても楽しい。いくら最初は渋ってみせても、いざ遊び始めたら誰より楽しそうに遊んでくれる。
 十四松は、一番上の兄が大好きだった。


 時々、遊び相手が誰も捕まらない時がある。そんな時十四松は一人でフラッと町へ出る。
 トト子ちゃん家の魚屋さんは相変わらず大繁盛しているし、デカパン博士の研究所に顔を出せば何度目の前で吹き出して見せても変わらずクソまずいメロンソーダが出て来るし、イヤミは相変わらず六つ子の見分けを付けない(多分あれは付ける気がない)。チビ太が八百屋でおでん屋台の材料を仕入れているのに出くわせば、買い付ける品物の中にリンゴを混ぜるのもすっかり手慣れたもの。
 完食したリンゴの芯を捨てようと路地裏を覗けば、また十四松の兄弟が一人。

 「…何だ、十四松か」

 ねえねえと肩を叩いた十四松を、誰だと振り向きざまに睨み付けた眼光は鋭かったが、相手が十四松と分かると途端に目元を緩め、そしてそっと目を伏せる。
 分かっている、この繊細な十四松の一つ上の兄は、ひどい目付きで睨んでしまって悪かったと思っている。そしてそれを言葉にしようとして出来なくて、マスクの下の口元は今きっと悔しそうに歪められている。
 分かっているから十四松は、そんなこといちいち気にしなくていいよ、の代わりに一つ上の兄の隣にしゃがみ込んで、兄の手に甘えるように擦り付いている猫の前に捨て損ねたリンゴの芯を置いてみる。
 猫は目の前のリンゴの芯を興味深そうにふんふん匂いを嗅いで、やがてシャリ、と一口二口食べ始めた。
 十四松がチラリと隣の一つ上の兄を見やれば、兄はとても優しい顔で猫がリンゴを食べるのを眺めていて。
 十四松は、そんな優しい兄の表情を見れるのがとても嬉しい。誰より臆病な分、本当は誰より優しいのを十四松は知っている。
 十四松は、一つ上の兄が大好きだった。


 夕方。やっほーいと家に帰ってみれば、居間には外へ出かける時は人一倍カッコつけた服(だけどセンスは昭和)で出て行く三つ上の兄だけが一人、パーカーにジーンズとすっかり気の抜けた格好に着替えて座っていた。

 「おお、おかえり、十四松」

 居間に入って来た十四松を見て笑顔を見せる兄のその顔の角度は、普段鏡を見て練習している“一番カッコ良く見える角度”ちょうどピッタリで、十四松がただいまと返事をするより先に、おい、今のどうだった、と聞いてくる。
 どうと言われたって目の前で瞳をキラキラさせている兄は自分と同じ顔で、それをカッコイイと思える美的センスを十四松は持ち合わせていない。
 だから、うん、ただいま兄さん、とだけ十四松が返事を返すと、三つ上の兄はあからさまにがっくりと肩を落とした。けれど次の瞬間、あ、そうだ、と言いながら上げた顔はすっかりいつも通りのカッコつけ兄さんの顔で、チョイチョイと十四松を手招きしてくる。
 今日パチンコ行ってたんだけど、負けはしなかったが勝ちも出来なくてな、余り玉でこれだけ交換出来たんだ、そう言って指さす卓袱台の上には色とりどりの飴玉が六つ。早い者勝ちだ、好きなの選んでいいぞと歯を見せて笑う。
 十四松は、そんな兄の笑顔なら大歓迎だった。作っていない自然な笑顔。早い者勝ちと言いながら六つある飴玉。
 十四松は、三つ上の兄が大好きだった。


 夜。晩ご飯も終えてまったりくつろぐ松野家の居間。あっちこっちで今日はああだったこうだったとみんなの話に花が咲く中、十四松の唯一の弟は時々話に参加しながらもずっと手の中のスマホをいじり続けていた。
 何してんのーと十四松が肩をぶつけて画面を覗き見れば、何だか面白そうなゲーム画面が目に入る。

 「十四松兄さんもやってみる?」

 弟は慣れた手付きで画面を操作しながら十四松にゲームの説明をし、はいどうぞ、と十四松にスマホを渡す。そうして二人で肩を突き合わせてああでもないこうでもない、あ、そこはこう!とやっていると、スマホの振動と共に画面上部にLINEの新着メッセージ。
 ゲームが面白かったので少し残念に思いながら十四松が弟の手にスマホを返そうとすると、弟はいいよと首を振った。今せっかくいいところなんだから、まだ一緒に遊ぼうよ、と。
 十四松は、そんな弟が自慢だった。甘えるフリして本当は誰より兄弟を甘やかしてくれる。
 十四松は、たった一人の弟が大好きだった。








 「だから、」
 「カラ松兄さんも一緒に帰ろ」








 真っ赤な夕焼けを背に十四松がクルリと振り向けば、他の四人の兄弟たちも同時に振り向いていた。
 グズグズと鼻を啜る音も、扱いが違うと叫んだ声も、みんなみんな聞こえていたよ。だって俺たちは兄弟で、みんな一緒の六つ子なんだから。
 真っ先に駆け寄ったのは一番上の兄で、お前何だよこのケガ、俺らがやったよりひどくなってるってどういうことだよ、チビ太にやられたのか?と今すぐとっちめに行きそうなほど憤り。
 次に駆け寄った二つ上の兄は、相手はチビ太だって分かってたから、こんなことになるなんて思ってなくて、と申し訳なさそうに眉を下げ。
 一番下の弟は、それでも晩ご飯になっても帰って来なかったから、一応ちょっとは探してみたんだよ、そしたらチビ太と飲んでたからやっぱりただのイタズラかと思っちゃって、としょんぼり涙ぐみ。
 一つ上の兄自身は何も言わなかったけれど、腕に抱かれた親友が、心配して損したと思ってムカついた、…だけど臼はちょっとやり過ぎた、ごめん、と言って。
 だから十四松は笑った。梨ならまだたくさん余ってるみたいだから、今夜一緒に食べよーね、兄さん。
 そんな五人の視線の先で、誰より兄弟思いの三つ上の兄が、また十四松の大好きな笑顔を見せてくれた。




 十四松の毎日は幸せだ。
 例え無職のニートでも、毎日食べるものも着るものも寝るところにも困らない。
 空が晴れてても雨でも曇りでも雪でも、暑くても寒くても風が強くても弱くても、毎日遊び相手にも話し相手にも困らない。
 毎日が楽しい。毎日が嬉しい。
 だっていつだって十四松の傍には、大好きな兄弟たちが居るのだから。

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